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2011年3月11日、テレビからの映像に目が釘付けになったのを今でも覚えています。東北地方に恐ろしいほどの強さで津波が押し寄せ、地域一体を飲み込んでしまっている映像でした。

数日後、水が残した無残で壊滅的な足跡が続く光景に、畏怖を感じ、言葉を失いました。しかし、時が経つにつれて、私の心をよりゆさぶったのは、災害が残した長期にわたる傷跡と、生存者がどのように津波の余波により残された課題に向き合ってきたのか、ということでした。

2012年秋、宮城県南三陸町の髙橋栄樹さんにお会いしたとき、彼から災害から生き残った生々しい経験を聞きました。また、コミュニティーを再建しようとする際に、彼が住んでいるような沿岸地域が直面した大きな課題についても語ってくれました。

髙橋さんの地域では、津波により、髙橋さんやご家族がすべてを奪われただけでなく、海の繊細なバランス均衡も崩されたそうです。あの壊滅的な出来事により、カニやヒトデなどの捕食種も津波で流されたため、謙虚なウニが残され、邪魔されることなく繁殖してしまったのです。捕食種がいなくなったことにより、ウニの爆発的増加を引き起こし、現在では津波前の元の生息数と比較すると7倍にもなるとされています。その結果、海藻の森を食い荒らし、世界で最も生産性の高い海域を広範囲にわたって海の砂漠と化してしまったのです。住処を失うことは、漁業の喪失につながり、政府の財政とインフラの多大な支援があったにも関わらず東北地方一体の漁業依存地域にとって、回復は時間がかかり困難を極めました。

 髙橋さんとのこの出会いは、ウニノミクスをアイディアから形にするきっかけとなりました。最新の水産養殖技術と過放牧状態の空のウニを使い、この環境課題を「機会」にしようと試みました。南三陸町での最初の試行テストをした後、年間を通して質の高い高級ウニを生産することができるだけでなく、沿岸生態系の再生と沿岸地域に意義のある雇用を創生することができると結論づけました。より多くの科学者が私たちの取り組みを支えてくださるようになり、海藻の再生は、二酸化炭素の吸収や海食作用の減少、海洋酸性化の影響を地域的に緩和することにつながると教わりました。また、磯焼けは日本だけの問題ではなく、世界ほぼ全体で起こっていることも知りました。捕食種の乱獲や海洋汚染、異常気象が重なり、かつての生産性のある海が砂漠化しているのです。 

私自身、ウニノミクス事業に大きな期待を持っています。

スキル、技術、適切な報酬を正しく組み合わせることで、深刻な地球規模の問題を、環境的、社会的、そして経済的にも、多くの方々にとってのチャンスに変えることができるからです。みなさまのご協力なしでは実現不可能な一大プロジェクトです。

このコンセプトを髙橋さんのような心強いパートナーの方々とともにまずは日本で実証し、そして、磯焼けが問題となっている世界の地域に展開していくこと。それが私の目指すゴールです。

 
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武田 ブライアン 剛
Brian Tsuyoshi Takeda